Aironaut(エアロナット)ユーザーインプレッション

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内房にてエアロナットの進水式を行った。この日の天気は晴れ、気温は20度まで上昇した。長袖にアノラック、ウェット地のロングパンツとソックスといういでたちでは暑く、水に入っても冷たくない。北風が吹いて細かい波が立ち、うねりがあるところで1メートル程度。初心者がソロで漕ぐには少し怖く、中級者なら問題ないだろうという状況であった。漕ぎ終えて思い浮かんだことを書き記したい。

1. 重量

カタログスペックでは9.0kgとなっているが実測では少し重たい。

乾燥した状態の船体布だけで約9.25kgであった。

抱えて一緒にアナログ式体重計に乗り、体重を差し引くという正確さに欠ける測定方法であったが、少なく見積もっても9.0kgということはない。

これにコーミングバーとスケッグを加えた船体自体の重量は9.7kgだ。

更に、スプレースカート、シーソック、ポンプ、収納バッグを加えると、11.6kgとなる。

 

2. 艇速

私が所持しているKライトと同程度であり、ファルトボートと比べても遜色のないものと言える。

全幅より水に浸かっている面が狭いため、想像よりもスピードが出た。

波を越える時も他のインフレータブルカヌーのように「よっこらせ」と鈍重に乗り越えるような動きをしない。

スケッグがある分だけ保針性に優れ、風や波でぶれることが少なかった。

 

3. 安定性

通常のカヤックでは着座位置が水面付近、腰辺りから下は水中にある。

これに対し、エアロナットは浮力が高いことから、ほぼ全身が水面の上に位置する。

そのため重心が高く、漕ぎ始めは少しふらつく気がしたものの、すぐに慣れてしまった。

横波を受けてもかなり安定している印象だ。

これは張り出したサイドチューブが利いているだけでなく、それがバウとスターンへ向けて傾斜しているのがミソだろう、と感じた。

下方向から波を受けても船体が跳ね上がらず、上手く受け流してくれるのだ。

 

4. 耐久性

単に船体布を見ただけではフェザークラフトの他のカヤックと比べるといかにも頼りない。

インフレータブルカヌーの特性である船体自体が持つ衝撃吸収性がどこまで働くのか、見極めていきたいところだ。

バルブは丈夫な素材を用いてはいるのだろうが、急所であることは間違いない。

遠征の際には予備を持っていったほうが良かろう。

他社製品であるが、私は旅の途中でバルブを破損してしまい、その内容を変えざるを得なかったことがある。

 

5. 積載

クロスリブを用いないため、荷物を詰め込む際に内部で引っ掛かるような箇所がない。

パドルで先端まで押し込むことができるし、細引きを結んで伸ばしておけば、取り出しも容易だ。

ハッチが欲しいという意見もあるかもしれないが、必要性は感じない。

デッキに張りがないので水が溜まりやすく、浸水のリスクが増すことから、むしろないほうがいいだろう。

 

6. シート

改善の余地がある。

座面は空気式注入式ではなくEVAフォームにしたほうが、尻は滑らず、取り扱いに手間もかからないだろう。

背面は体型別にサイズのオプションが欲しい。

腰の側面のクッションの具合を調整できれば、快適なフィット感が得られる。

 

7. フットブレイス

ボトムとシーソックの踵が当たる部分は傷みやすい。

私はKライトを漕ぐ時にフットブレイスとクロスリブの間にシートを敷いて保護をしていたが、エアロナットの場合は単純に敷いただけでは引っ掛かりがないのでズレてしまう。

空気を入れる際にボトムとサイドチューブの間に両端を挟み込んでしまうとか、固定するための工夫が必要だ。

 

8. セルフレスキュー

パドルフロートが標準装備されているが、喫水が浅く安定性のあるエアロナットには「あぶみ」のほうが有効かもしれない。

コーミングに輪を引っ掛けて、縄梯子のようなものを水中に垂らしてしまうのだ。

これならフロートを膨らますより早く再乗艇できてしまう、はずだ。

 

9. 組み立て

空気を入れるだけなので、「組み立て」と言うのは適当ではないような気がする。

マニュアル不要なくらい簡単で、形にするだけなら初回でも10分で終わる。

シート、フットブレイス、サイストラップの調整具合を覚える必要はあるが、これも難しくない。

 

10. 収納

撤収も簡単この上なく、バルブを開放し、スケッグとコーミングバーを外したら、後は船体を巻くだけだ。

作業に時間がかからないということは、それだけ遊んでいられる時間が長くなるということだ。

しかし、付属のマニュアル通りの巻き方では、空気が抜け切らないし、収納サイズはもう少し小さくなりそうである。

小さくできればもっと身軽になるし、または空いた分だけ遊び道具や酒などを詰め込んでもいい。

 

11. その他の雑感

陸上でも水上でも特別な技能や大きな労力を要せず扱えるエアロナットは、水辺への距離を縮め、遊びの可能性を広げてくれる舟と言えるだろう。

楽しみを何か加えてもいいし、深めてもいいし、全く新しいことを始めてもいい、そんな気にさせてくれるのだ。

欠点を挙げるならば、贅沢で我侭なことではあるが、新艇故に確実な信頼性を有するとは評価できる段階にないことだろう。

K1やカサラノといった他のフェザークラフト製スキンカヤックやエアラインに比べ、実績がないのだから。

ユーザー、ディーラー、メーカーに共通の課題であり、積み重ねていかねばならない。

そういう意味では、この舟を所有することはすなわち、自分が革新の途上にいると解釈することもできるのではないか。

「やべえ、俺ってすげえかもしれない」と勘違い、もしくは実感できるような、数々の非常に貴重な体験が待っているということだ。