角幡唯介のグリーンランドのお土産
角幡唯介君が昨年、2015年のグリーンランドでのカヤックを使った遠征のお土産にタテゴトアザラシの腹部分の毛皮を送ってきてくれた。シオラパルクに永住している大島さんという日本人の方がスキーのシールように譲ってくれたものらしい。スキーシールに加工するは大変そうなので、まずは店に飾るとする。角幡君はまた今年の冬、グリーンランドに旅立ち、彼の探検家人生最大の旅になると言っている。この秋にでも漕ぎに行こうといってたのだが、時間がとれなかった。生きて帰ってきたら南の島の島渡りでもしよう。そして、そのうちグリーンランドも。Enjoy your trip,be safe and good luck!
北緯77度50分。先住民集落としては世界最北であるグリーンランドのシオラパルクから海岸線を北西に漕ぎすすむ。夏をむかえた極北の海には、周囲の氷河から崩れおちる巨大な氷山と、カナダ国境海峡から流れてくる崩壊した冬季の海氷が無数にうかび、壮大な景色が展開されている。2015年、私はカヤッカーの山口将大とともに6月下旬から8月末までの二カ月にわたって、この氷海でカヤックを漕いだ。セイウチの襲来に遭い、浮き氷に二週間も閉じこめられるという波乱つづきの旅。氷がゆるんだ隙をみつけて逃げだすように北上して、低温下でメラメラという音をたてて表面が凍りついていく海に不気味なものを感じながら、ようやく小さな無人小屋にたどりついた。そこに流れる時間の豊かさは言葉にならない。海鳥の歓声がひびき、アザラシの歓迎をうける夏の北極の海は、全面的に白く凍結してひたすら厳格な冬とはまたちがった自然の懐の深さを教えてくれた。